児童虐待のない世のために ~私たち一人ひとりができること~

目を覆いたくなるような、あるいは耳をふさぎたくなるような児童虐待のニュースが後を絶ちません。同じ年ごろの子どもを持っていなくても、「児童虐待の問題は決してひとごとではない」と感じる人も多いようです。昨今、同じように話題になることが多いセクハラ・モラハラ・マタハラなどの問題と、根っこに共通したものが読み取れるからかもしれませんね。人間の弱さや社会のひずみが、弱い立場の人々の上に被害となってあらわれる点が似ているからでしょうか。ここでは、児童虐待のない世の中にしていくために、社会の一員として私たち一人ひとりができることについて考えてみましょう。

・地域の活動に参加してみる

ひとり暮らしの方、夫婦やカップルでお住まいの若い方、あるいは親と同居している方々は、地域活動にはノータッチというケースも少なくないのではありませんか? 最近では、自治会の加入率も年々下がる一方だともいわれています。自治会に入ると役員を務めなければならなかったり、回覧板を回したり、ごみ当番が回ってきたりするのが億劫なので入らないとおっしゃる方も多いのが現状です。

けれども、思いがけない災害が起きることも多いこのごろですから、視点を変えて考えてみてはどうでしょう? 地域活動に参加することは、自分の住む地域を知るということです。それは、いざという時には本当に役立つことです。場合によっては命を分けることもあると言っても過言ではありません。あなたがそこに住んでいることそのものが誰にも知られていない状態では誰もあなたを助けようがありませんが、そこに住んでいるはずのあなたが避難所に「いない」となれば探してくれる人もあるし、助けに来てくれる人も出てくる可能性があるのです。

「情けは人のためならず」です。「誰かかわいそうな子を探して見つけるため」と考えなくても構いません。自分のためで構わないので、まずは地域のお祭りや催しに積極的に参加してみませんか? 身近なところに新しい発見がたくさんあるはずですし、その小さな一歩を踏み出すことが大きな歩みへとつながっていくことでしょう。

・近所に関心を持つ

そんなことを言えば、不必要に他人のうわさに聞き耳を立てる姿勢をよしとするようですが、もちろんそういうことを言っているのではありません。「つかず離れず」という絶妙な距離感を持って、近所のことをある程度把握しておくべきだということです。ふだんはおせっかいを焼いたりすることなく、必要なときにはそっと手を差し伸べることができれば理想です。

近隣の家庭の家族構成の大体のところを把握しておくことは、防犯上も役立ちます。心当たりのない人が隣近所の敷地内をうろうろしている場合は、ひょっとしたら泥棒かもしれません。こんなことを書くと「プライバシーの侵害だ」という声も聞こえてきそうですが、実際に自分の家の敷地内に見知らぬ他人が侵入してきたとしたらどうでしょう? そんな人は怪しいに決まっているとは思いませんか? 日本には昔から近所で助け合う伝統があったのに、明治以降の近代化はゆがんだ個人主義を助長してしまったようにも思えます。「よその家庭のことは放っておこう」という姿勢も、壁一枚隔てた隣の家で子どもが虐待されていても誰も気づかない風潮を生み出してしまった原因の一つではないでしょうか?

・困っている親子に声をかける

あなたは道を歩いているとき、あるいは公共の乗り物の中で、あるいはコンビニやスーパーの中で困っている子ども連れを見かけたらどうしますか? 「何に困っているのかわからないから、とりあえずスルー」しますか? 「何に困っているのか」は、たずねてみればすぐにわかることではないでしょうか? わかってみれば、それはあなたにも簡単に手伝えることかもしれません。実際に手伝えばよいのではないですか? そのことで何分の時間を損しますか? その何分間はそのときのあなたにとって取り返しのつかないようなものなのでしょうか? あなたがその日、その何分かを困っている人に差し出すことで、次の日はまた違った場所で違った人が違った人に同じように何分間を差し出すことで、そんな小さな積み重ねが子育てしている人の苦労を少しでもやわらげることにつながるとは思いませんか?

自分も子育ての経験がある人は、新米ママさんに比較的声をかけやすいようです。自分が通ってきた道ということで、ぱっと見てどんなことに困っているのか、どういう手伝いができるのかがわかりやすいのでしょう。あなたに子育て経験がなかったとしても、何も難しく考える必要はありません。乗り物の中で泣きやまない子どもを抱えて困っている新米ママさんを見かけたら、子どもに「いない、いない、ばあ」をしてあげるだけでもいいのです。周りの人の目が気になって恥ずかしいですか? あなたの顔が何十秒の間、何十ミリかずれるだけのことです。地球的規模から考えれば全然大したことではありません! でも、たったそれだけのことでその新米ママさんの心はぼわっと温かくなり、それが何日かは確実に続くのです。そして、町に「知らん顔の他人」よりも「気にかけてくれる隣人」の方が多くなればなるほど、その温かさが持続する時間は比例して長くなることでしょう。「周囲が自分の子育てを気にかけてくれる」「子育てが楽しくなる」「子育てをがんばろうと思える」、そんな気持ちの積み重ねを応援することだって、「遠くから」「間接的に」だとしても虐待防止につながっているとは思いませんか? 虐待のニュースを見聞きして嘆いているだけでは始まりません。小さな一歩からでいいので、自分にできることからぜひ始めてみましょう。

・ためらわずに児童相談所へ通告する

そんな生活の中で異状を感じることがあったら、ためらわずに児童相談所へ通告することも大切です。通告は匿名でもできます。これは「おせっかい」などではなく、あなたには善良な市民として「通報の義務」があることを忘れてはいけません。なぜならすべての子どもは親の所有物ではなく社会全体の宝物で、社会全体で守るべきかけがえのない存在だからです。