児童虐待の現状

連日、児童虐待の悲しいニュースを目にします。ここ数年で児童虐待が増えているイメージがありますが、実際の数字を見ても虐待件数は増えています。

虐待を受けた子どもは将来どのような特徴を示すのでしょうか。この記事では、ここ数年の児童虐待の件数と虐待の種類、虐待によって将来子どもが受ける悪影響についてご説明します。

児童虐待の定義 

児童虐待とは、児童の周囲の人間(保護者、学校教師、施設職員など)が、児童に対して虐待を加える、もしくは育児放棄(ネグレクト)することです。

児童虐待は児童虐待の防止等に関する法律で禁止されているため、虐待の疑いのある子どもを発見した時には児童相談所に通報する義務があります。番号は189番(いちはやく)です。

通報すると、児童相談所全国共通ダイヤルにつながり、必要な場所へつないでくれます。

児童虐待の件数は増加傾向にある

平成2年に統計をとり始めて以来、毎年増加傾向にあります。統計をとり始めた平成2年と直近5年の児童虐待件数(相談対応件数)は下記の表の通りです。

参考:http://www.orangeribbon.jp/about/child/data.php

平成2年平成25年平成26年平成27年平成28年平成29年
1,101件73,802件88,931件103,288件122,578件133,778件

統計を取り始めた平成2年に比べると、対応件数は約130倍に増えています。

単純に虐待件数が増えたわけではなく、昔はしつけとして見過ごされていた行動が虐待にカウントされるようになったこと、「虐待は通報する」が広く知られるようになったことなども件数増加の要因です。

ここ5年間に注目しても、約2倍に増加しています。国民全体の虐待に対する意識が高まっていると考えられます。

虐待の種類

虐待には心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、ネグレクトの主に4種類あります。中でも相談対応件数がもっとも多いのは心理的虐待で、ついで身体的虐待、ネグレクト、性的虐待と報告されています。

性的虐待に関しては子どもが説明できなかったり、明るみに出なかったりするため「実際の虐待件数」と一致しているとは限りません。

下記の件数(割合%)は平成29年度の数値です。

心理的虐待

年間の件数は72,197件( 54.0%)です。心理的虐待は「言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)など」とされています。

子どもの前で夫婦喧嘩をするだけでも心理的虐待とされています。他の虐待と比較すると程度は軽いと思われがちですが、父親が母親を目の前で殴っている様子を見ながら育った子どもは、片方の親に過度に肩入れしたり、特定の性別に嫌悪感を抱いたりすることがあります。

相談対応の約半数が心理的虐待です。直ちに命を脅かす可能性は低いので、心理的虐待から一時保護に至ることは少ないです。

身体的虐待

件数は33,223件( 24.8%)です。身体的虐待には「殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する」などがあります。

虐待の最たるイメージが「身体的虐待」ですよね。命に関わるため、激しい身体的虐待が認められる場合は一時保護の措置が取られることもあります。

性的虐待

件数は1,540件( 1.2%)です。他の虐待と比べてかなり少数です。性的虐待には「子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする」などがあります。

子どもに性的ないたずらをすることはもちろん、娘に売春をさせる親も性的虐待に当てはまります。特に幼少期に性的虐待を受けた子どもは後遺症が大きいため、性的虐待が認められた時には一時保護の措置が取られることも多いです。

デリケートな問題のため、児童相談所の中でも性的虐待の専門家のみが対応する部分です。

性的虐待は子どもから言い出すことが難しく、また幼少の場合は自分が何をされているのかも把握できないため、実際の件数よりも少なく出ている可能性があります。

ネグレクト

件数は26,818件( 20.0%)です。ネグレクトには「家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない」などがあります。

反省をうながすために冬に屋外に出すしつけや忙しさから食事を与えられない場合にもネグレクトとされます。

一言で虐待と言っても、その種類や程度はさまざまです。虐待を指摘されたときに「しつけのためだった」と説明する親がいるのも認識の違いによるものかもしれません。

虐待による将来への悪影響

虐待は命をおびやかすだけではありません。その後の生きづらさや人間関係の難しさにも影響を及ぼします。

虐待を受けていた子どもには下記のような特徴が見られることがあります。

・大人の顔色を過度にうかがう

・恋愛の場面でつまずく

・メンタル面に影響が残る

・発達障害のような症状が出る

・自分が親になった時、子どもに虐待してしまう

虐待を受けた子どもは、その場で傷つくだけではありません。親との関係性は恋愛などの人間関係にも影響を及ぼします。また、発達障害やパーソナリティ障害に似た症状を引き起こし、子どもの「生きづらさ」を助長する可能性もあります。

さらに、虐待をしてしまう親の中には「自分も虐待をされて育った」という人が少なくありません。

虐待はその場で傷を負うだけでなく、生涯にわたって影響を及ぼし続けるのです。

虐待を受けている可能性のある子どもを見つけたら189番に通報

疑いがある時に通報するのは国民の義務です。 通報の義務については児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)により定められています。

通報のうち、80%以上は実際に虐待が確認されています。「もしかしたら虐待じゃないかも」と思わずに、疑わしい場合は通報することが大切です。

最後に

虐待の相談件数は年々増加傾向にあります。平成12年からは「疑わしい場合は通報する義務がある」と法律で定められていますので、近所や学校で虐待が疑われる子どもを発見した時には通報しましょう。また、子育てに心配のある方は児童相談所が無料で相談に乗ってくれます。誰にも言えずにふさぎこむ前に、専門機関で相談することをおすすめします。